2026年2月26日〜3月1日にパシフィコ横浜で開催されたCP+2026は、来場者数5万8,000人超とポストコロナでは最高クラスの盛り上がりを見せたイベントでした。
その中でもCANONブースは、従来のミラーレスやレンズ展示だけでなく、「アナログコンセプトカメラ」や3D・VR関連技術など、これまで以上に攻めた内容で大きな注目を集めています。
特に、レトロな箱形デザインとウエストレベルファインダーを備えたコンセプト機は、多くの来場者を立ち止まらせる“ショーのサプライズ”的存在でした。
本記事では、実際に発表・展示された情報をベースに、CP+2026でのCANONの狙いとトレンドを整理しつつ、筆者としての感想も交えながら、2026年以降のキヤノンの方向性を読み解いていきます。
アナログコンセプトカメラが示す「キヤノンの遊び心」

CP+2026のCANONブースで最も話題を集めたのが、「Analog Concept Camera」と呼ばれる試作機でした。
メーカー公式サイトでもコンセプト展示として強調され、海外メディアのショーレポートでも「ショーのハイライト」「サプライズ」と表現されています。
レトロな箱型ボディ、ウエストレベルの光学ファインダー、完全マニュアルフォーカスという仕様は、スペック競争とは別次元の“撮影体験そのもの”にフォーカスした提案と言えるでしょう。
ウエストレベルファインダーと箱型デザインの魅力
Analog Concept Cameraは、上から覗き込むウエストレベルファインダーを備えた箱型スタイルで、古い二眼レフやボックスカメラを連想させる外観です。
光がレンズから入り、ミラーでファインダーに導かれ、撮影時には別のミラーを使ってセンサーに結像する構造は、古典的な一眼レフ構造を現代的にアレンジしたものと紹介されています。
実機に触れた海外メディアは、「手に取った感触が非常に良く、サンプル画像のクオリティも高かった」と評価しており、単なるモックアップではなく、実用レベルの試作機として仕上げられている点が印象的です。
個人的には、この“あえて不便さを残した設計”が、撮影プロセスを楽しみたいユーザーに強く刺さると感じました。
完全マニュアルフォーカスという選択
Analog Concept CameraはAFをあえて搭載せず、完全マニュアルフォーカスでのピント合わせを前提としています。
これは、最新の被写体認識AFや高速連写とは真逆の方向性で、「ゆっくり構図を作り、じっくりピントを合わせる撮影スタイル」を提案しているように見えます。
実際、筆者自身もMFレンズでの撮影を楽しむタイプですが、このコンセプト機には「AFの便利さに慣れきった現代ユーザーに、改めて“撮る行為”の楽しさを思い出してもらう」というメッセージを感じました。
製品化は未定とされているものの、会場での反応やSNSの盛り上がりを見ていると、限定生産でも良いので何らかの形で商品化してほしいと率直に思います。
コンセプト展示が持つブランド戦略上の意味
CP+2026におけるAnalog Concept Cameraは、スペック的にインパクトのある“フラッグシップ新機種”ではありませんが、ブランドイメージという観点では非常に大きな意味を持つ展示でした。
キヤノン公式のニュースリリースでも、3D・VRなど先進技術と並んで「多彩な撮影体験」の一環として位置づけられており、単発のネタではなく“体験重視”へのシフトを示唆しているように感じます。
筆者の印象としては、「高性能なEOS・RFシステム」と「遊び心あるコンセプト機」を同じブース内で見せることで、キヤノンというブランドの懐の深さをアピールしていたように見えました。
単に“売れる製品”だけでなく、“写真文化として面白い提案”を続けていく姿勢は、長期的なファンづくりの面でもプラスに働くはずです。
3D・VR・MRで見えたイメージングの次のステージ

CP+2026のCANONブースでもう一つ大きく取り上げられていたのが、3D・VR・MR(ミックスリアリティ)に関する展示です。
キヤノンは以前からデュアル魚眼レンズを使ったVRソリューションや、MREALと呼ばれるMRシステムを展開してきましたが、今期の展示では「専用レンズに依存しない3D撮影」「空間体験としての映像表現」が大きなテーマとして強調されていました。
静止画・動画を問わず、撮影データをどのように立体的・空間的なコンテンツとして活かすか、という方向に明確に舵を切りつつあるように見えます。
MREALを中心としたミックスリアリティ体験
キヤノンのMREALは、現実空間とデジタルコンテンツを重ね合わせて体験できるMRシステムで、CP+2026では複数のデモコンテンツが用意されていました。
来場者は専用ヘッドセットなどを用いて、実空間内に3Dオブジェクトや映像表現が重ね合わされた状態を体験でき、「撮る・見る」から「その場にいるように感じる」へと表現の軸が広がっていることを実感できます。
筆者としては、従来は産業用途やBtoBの印象が強かったMREALが、写真・映像イベントの文脈の中で一般来場者にも開かれた形で展示されている点に、裾野拡大への意欲を感じました。
単なるガジェット枠ではなく、「将来のコンテンツ消費の一形態」として現実味を帯びてきた印象です。
Dual Fisheyeレンズから一歩進んだVR・3D提案
CANONはこれまでもデュアル魚眼レンズを用いたVR撮影を積極的に展開してきましたが、CP+2026ではこの分野をさらに押し出す形で複数の展示が行われました。
具体的には、既存のVRレンズを使ったコンテンツ展示に加え、「Dual Pixel CMOS AFの構造を活かし、専用レンズなしでも3Dイメージを生成する技術コンセプト」が紹介されており、静止画から3D表現を作り出すデモが話題になりました。
これは、一つの撮像面上で微妙に異なる視差情報を得ることで、立体感のある画像を生成するアプローチで、将来的にはVRゴーグルやMRディスプレイ向けのコンテンツ制作をより手軽にする可能性があります。
個人的には、「専用機材がないと始めにくい」というVRのハードルを下げる方向性として非常に面白く、今後のソフトウェア側の進化にも期待したいところです。
静止画文化と3D・空間表現をどうつなぐか
3D・VR・MRと聞くと「ゲーム」「産業用途」のイメージが強いかもしれませんが、CP+2026のCANONブースはあくまで写真・映像の延長線上としてこれらの技術を提示していました。
たとえば、従来の写真撮影で得られたデータを、後から立体的・空間的に楽しむコンテンツに変換するデモや、VR空間内で写真作品を鑑賞するような提案を通じて、「写真のアウトプット先としての3D/MR」をイメージしやすくしています。
筆者の感想としては、いきなりすべてのユーザーが3D制作に飛び込むとは思いませんが、「将来こういう形で作品を見せられるかもしれない」という具体的なビジョンが示されたことで、プロ・ハイアマチュア層の一部は確実にこの分野へチャレンジし始めるだろうと感じました。
写真の“最終形”が紙やモニターだけでなく、「空間」になる未来が、少しだけ現実味を帯びたように思います。
初心者〜若年層を意識したミラーレス・コンデジ戦略

CP+2026のCANONブースは、ハイエンド機や先端技術だけでなく、初心者や若年層に向けた展示も明確に用意されていました。
キヤノン公式ニュースリリースによると、エントリー向けミラーレスカメラや、若い世代の間で再び注目を集めているコンパクトデジタルカメラを体験できるコーナーが設けられ、PowerShotシリーズ30周年を記念した特別仕様の「PowerShot G7 X Mark III」が展示されたとされています。
これは、“高画質なスマホ世代”に対して、どのように専用カメラの価値を訴求していくかというキヤノンの回答の一端と言えるでしょう。
エントリーミラーレスで「初めてのEOS体験」を最適化
キヤノンのニュースリリースでは、初心者向けのミラーレスカメラを使った撮影体験コーナーが用意されていると明記されており、スマホからステップアップしたいユーザーでも気軽に一眼画質を体験できる構成になっていました。
タッチ&トライエリアでは、軽量ボディとコンパクトなズームレンズを組み合わせたセットが多く並び、スタッフが操作や撮影モードの使い方をサポートする形での体験が可能です。
筆者としては、「難しそうだから…」と一眼・ミラーレスを敬遠していた層にとって、実際に触りながら不安を解消できる機会になっている点を高く評価しました。
CP+という場が、“ガチなマニアだけのイベント”ではなく、入門者の入口としても機能していると感じます。
PowerShot 30周年とコンデジ回帰の動き
ニュースリリースによれば、2026年はコンパクトデジタルカメラ「PowerShot」シリーズの30周年にあたり、これを記念した特別仕様のPowerShot G7 X Mark IIIがCP+2026の会場で展示されました。
近年、若年層を中心に「スマホとは違う質感の写真が撮れる」「あえてコンデジで撮るのが楽しい」といった理由でコンパクトデジカメが再評価されており、CP+2026全体としても“コンパクト機ブーム”がトレンドの一つに挙げられています。
G7 X Mark IIIは、Vlog用途を意識した動画性能と明るいズームレンズを備えたモデルとして定評があり、そこに30周年の特別仕様というストーリーが加わることで、単なるスペック以上の魅力を持った製品として訴求されていました。
個人的には、「コンデジ30周年」をきっかけに、カメラ趣味への入口としてのコンパクト機が再び脚光を浴びる動きは非常に面白いと感じます。
若年層・ライト層に向けた体験設計とSNS連携
CANONのCP+2026特設サイトでは、オンラインイベントや最新情報をnoteなど外部プラットフォームも活用して発信しており、若年層が情報にアクセスしやすい設計になっています。
会場でも、撮影体験と連動したSNS投稿キャンペーンや、ユーザー参加型の企画が行われており、来場後すぐに自分の体験をシェアできる導線が用意されていました。
筆者の感想としては、単に「良いカメラを並べる」だけでなく、「撮ったものをどう見せるか」「どう繋がるか」まで含めて設計されている点が現代的で、ブランドとしてのコミュニティ志向を感じました。
特に、コンデジやエントリーミラーレスをきっかけに、SNS発信から写真・映像表現に深くハマっていく若いユーザーが増えていきそうな雰囲気があり、その意味でもCP+2026は象徴的な年だと感じます。
まとめ
CP+2026のCANONブースは、「Analog Concept Camera」というレトロかつ挑戦的な試作機と、3D・VR・MRを含む先端イメージング技術、そしてエントリー向けミラーレスやPowerShot 30周年といった初心者・若年層向けコンテンツがバランス良く混在した、非常に情報量の多い展示でした。
筆者としては、「高性能なEOS・RFシステムでプロ/ハイアマを支えつつ、遊び心あるコンセプトと新しい体験の場を提示する」というキヤノンの姿勢が、ここ数年で最も鮮明に伝わってきたCP+だったと感じています。
特に、Analog Concept CameraやDual Pixel由来の3Dイメージといった“未来の遊び場”が具体的な形として見え始めたことで、単なるスペック競争にとどまらないイメージングの可能性が、ぐっと身近に感じられるようになりました。


